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脱WordPressとヘッドレスCMS移行を考える前に。これまでのWebと「AIネイティブなWeb」は何が違うのか

白濱良太白濱良太
WordPressやWixのロゴが載ったひび割れた土台から、Sanity・Contentful・StrapiなどヘッドレスCMS+AIを核にした新しい土台へ移り替わるイラスト

時代が変わっても、Webは今までのままでいいのか

ここ数年で、仕事の進め方は大きく変わりました。文章を書くのも、調べ物をするのも、資料をまとめるのも、AIが当たり前に隣にいる。そんな時代になっています。

ところが、多くの会社のWebサイトは、AIが登場する前のままの土台で動いています。時代の前提が変わったのに、Webの足元だけが据え置きになっている。これは、一度立ち止まって考えてみる価値のある問いです。

この問いが引っかかるのは、たとえばこんな方ではないでしょうか。

これから新しくWebサイトをつくる方

WordPress、ノーコード、AIツール。選択肢が増えすぎて、どれを選べば長く使えるのか、判断がつかない。

いまのWordPressに、限界を感じている方

表示が遅い、更新のたびに気をつかう、前の担当者が辞めてしまって誰も触れない。そんな状態が続いている。

ノーコードツールから、次を探している方

STUDIOやWix、ペライチで形にはなったけれど、これからのAI時代の運用には、少し物足りなさを感じている。

ひとつでも当てはまる方には、きっとお役に立てます。これからお話しするのは、その「Webの土台」を、いまの時代に合わせて選び直すための話です。

20年、Webを作ってきて思うこと

私は20年ほど、Webの世界で制作と運用に関わってきました。手書きのHTMLから始まり、Movable Type、WordPress、最近ではSTUDIOのようなノーコードツールまで、その時々の「主役」を一通り触ってきました。

その経験から正直に言うと、WordPressは決して「オワコン(時代遅れ)」ではありません。今でも世界中の多くのサイトを支えている、優れた仕組みです。

ただ、ひとつだけ確かなことがあります。WordPressもノーコードツールも、AIが当たり前になる前の時代に設計された仕組みだということです。優れていることは変わりません。けれど、AIを前提にした運用に切り替えようとすると、後から機能を足していく形になり、どこかで噛み合いにくくなる場面が出てきます。

もし今、すでにWordPressで運用していて、表示の重さや更新のしづらさに頭を悩ませているとしたら、それはあなたの努力不足ではありません。多くの場合、原因は人ではなく、土台となる仕組みの側にあります。その仕組みが、いまの時代に合わなくなってきている。ただ、それだけのことです。

この記事では、その先、つまり「AIネイティブな仕組み」とは何で、そこに切り替えると何が変わるのかを中心にお話しします。

AIネイティブな土台を中心に、コンテンツ(中身)・表示(見た目)・運用基盤・AIによる更新・連携がつながるハブ図。
Webサイトは単体の技術ではなく、中身・表示・運用・AI連携がつながった一つの仕組み。その全体をAI前提で組み直すのがAIネイティブ。

AIネイティブなWeb運営とは、どういうことか

では「AIネイティブなWeb運営」とは、具体的に何でしょうか。

ひとことで言うと、AIを中心にして運営するWebサイトのことです。

これまでのWebサイトは、つくるのも、直すのも、人の手と発注が前提でした。デザイナーにデザインを頼み、コピーライターに文章を頼み、コーダーやエンジニアに実装を頼み、ディレクターが全体を取りまとめる。更新のたびに、誰かに依頼して、待って、確認して、また依頼して。

AIネイティブなWebサイトは、ここが変わります。デザイン、文章、実装、更新といった作業を、外部への発注を都度はさまずに、AIを中心に進めていける。「こう直したい」と言葉で伝えれば、その通りに動きはじめる。そういう運営です。

ただ、これを実現するには、ひとつ条件があります。土台そのものを、AIが扱える形に変えておく必要があるということです。

ここが肝心なところです。WordPressやノーコードツールは、AIが外側から自由に操作することを前提に作られていません。だから、後付けで「記事を書くAI」「画像を作るAI」のような連携は増えてきていても、土台そのものがAI向けに整理されていないため、できることに限界があります。アプリにAIを貼り付けても、土台が古ければ、作業が少し速くなるだけで止まる。これと同じ構造です。

だからこそ、AIネイティブなWebでは、土台のつくり方そのものが違います。具体的には、サイトの「中身(コンテンツ)」と「見た目(サイト本体)」を、最初から切り離しておきます。なぜ切り離すのか。中身を、見た目とは別の「整理された専用の置き場所」にためておくと、その中身をAIが正確に読み取り、扱えるようになるからです。中身と見た目がひとかたまりになっていると、AIはどこに何があるのか分からず、うまく手を出せません。切り離して整理しておくことが、AIと一緒に運営するための前提になるのです。この置き場所を、ヘッドレスCMSと呼びます。

実は、いまあなたが読んでいるこの webull.jp 自体が、この仕組みで動いています

AIネイティブなWebサイトは、大きく3つの部分でできています。中身を置く場所(CMS)、その中身を受け取って見た目をつくる部分(フロントエンド)、そしてサイトを動かす基盤(ホスティング)。この3つを、それぞれAIと相性のいいもので組み上げます。webull.jpの場合は、中身の置き場所にSanityというヘッドレスCMSを、見た目をつくる部分にNext.jsという仕組みを、動かす基盤にVercelを使っています。私たちは、人にすすめるものを、まず自分たちで使っています。

こうした道具は、役割ごとにいくつも選択肢があります。代表的なものを挙げると、次のとおりです。

  • 中身の置き場所(ヘッドレスCMS):Sanity/microCMS(国産)/Contentful/Strapi/Storyblok など
  • 見た目をつくる仕組み(フロントエンド):Next.js/Astro/Nuxt など
  • 動かす基盤(ホスティング・CDN):Vercel/Cloudflare/Netlify など

ここで、WordPressとの構造の違いがひとつあります。WordPressは、中身の管理も見た目も機能も、ひとつの仕組みに丸ごと含まれています。AIネイティブな構成では、役割ごとに別々のサービスを選び、それぞれを個別に契約して組み合わせます。一見手間に見えますが、役割が分かれているからこそ、どれかが時代に合わなくなっても部分ごとに入れ替えられて、土台全体を作り直さずに済みます。

ここで、これまでの運営とAIネイティブな運営が、どう違うのかを表で見てみます。両者は、優劣の問題ではありません。そもそも設計された「前提」が違います。AIがなかった時代に作られたか、AIがある前提で作られたか。その前提の違いが、日々の運用にこう表れます。

管理画面
これまで中身と見た目が一体。テーマやプラグインに縛られる
AIネイティブ中身は専用の置き場所で管理。見た目と切り離して扱える
構造
これまで機能を足すほど複雑化し、全体が見えにくくなりやすい
AIネイティブ中身が整理されてたまる。AIや他サービスから扱いやすい
更新
これまで手順が属人化しやすく、特定の人しか触れなくなりがち
AIネイティブ整理された流れで更新。引き継ぎやすく、社内で回せる

これまでのWebと、AIネイティブなWebは何が違うのか

もう少し具体的に、両者の違いを見ていきます。

表示の速さ。これまでの多くのサイトは、アクセスがあるたびにサーバーがページを組み立てて返す仕組みです。だから、構成やプラグイン次第で重くなりやすい。AIネイティブな作りでは、完成したページをあらかじめ用意しておき、CDN(世界中に置かれた配信網)が訪問者のいちばん近くから届けます。組み立てを待たせない分、構造的に速いのです。表示の速さは、訪問者の離脱や検索順位にも影響します。

更新のしやすさ。整理された置き場所に中身をためていくので、更新の流れがすっきりします。AIネイティブな作りでは、言葉で指示するだけで下書きができる、という運用にもつなげやすくなります。

AIとの相性。これが一番大きな違いです。中身がきれいに整理されてたまっているほど、AIはそれを正確に扱えます。古い土台に後からAIを足した状態だと、ここがうまく噛み合いません。

属人化からの解放。「前の担当者が辞めて、誰も触れない」。これはWordPress運用でよく聞く悩みです。中身と本体が分かれ、構造が整理されていると、特定の人の頭の中だけに運用が依存しにくくなります。

表示の速さ
これまでアクセスのたびにサーバーがページを組み立てて返すため、構成によっては重くなりやすい
AIネイティブ完成したページを事前に用意し、CDN(世界中の配信網)が訪問者の近くから届けるので、構造的に速い
更新のしやすさ
これまで手順が増え、慣れた人に依存しがち
AIネイティブ流れがすっきり。言葉で指示する運用にもつなげやすい
AIとの相性
これまで後から足す形になり、噛み合いにくい
AIネイティブ中身が整理され、AIが正確に扱える
属人化
これまで担当者が辞めると触れなくなることがある
AIネイティブ構造が整理され、引き継ぎやすい
セキュリティ
これまでログイン画面が外部に公開されており、攻撃の標的になりやすい。プラグインの更新も欠かせない
AIネイティブ公開されるのは完成したページだけ。管理画面やデータベースが外部になく、攻撃される入り口がそもそも極端に少ない

AIネイティブだと、何が変わるのか

土台をAIネイティブにすると、運用の現場で何が変わるのか。

まず、更新のハードルが下がります。整理された仕組みの上では、「こう直したい」と言葉で伝えるだけで下書きが用意される、という運用に近づきます。専門知識がなくても、自分たちの手でサイトを育てていけるようになります。

次に、自分たちで運用できるようになります。外部に頼りきりだった更新を、社内で回せる範囲が広がります。これは、長く運用するほど効いてきます。

そして、属人化から解放されます。担当者が変わっても、整理された土台の上なら引き継ぎやすい。サイトが「特定の誰か」に縛られなくなります。

椅子に背を預け、自社サイトが順調に動くのを満足げに眺める人のイラスト

ひとつだけ、正直にお伝えしておきたいことがあります。AIに全部任せれば品質が上がる、という話ではありません。AIに丸投げすると、それらしいけれど芯のないものができあがります。

私たちが大事にしているのは、人が設計と仕上げを担い、AIが実装を担うという役割分担です。割合でいえば、人が2割、AIが8割。けれど、その人の2割、つまり、どんなサイトにするかを決め、最後の品質を整える部分が、仕上がりを決めます。AIは強力な実装の相棒であって、判断する人の代わりにはなりません。

「手作業の方が早い」は本当か。運営して感じていること

ここからは、私自身がAIネイティブなサイトを構築・運営してきた中で感じていることを、ひとつだけお話しさせてください。

ちょっとした文章の手直しや装飾なら、AIを動かさずに「手作業の方が早いんじゃないか」と思う方も、いるかもしれません。

その気持ちは、わかります。一文の修正を指示して、十数秒の待ち時間(マイクロタイムロス)。自分の手でやった方が早い場面も、たしかにあります。

しかし、AIが産業やオフィスワークの中心になっていく時代には、やはり、その根本の考え方自体を変えていく必要があります。

AIの場合は、たとえばこう使います。

こうすると、人の目では見落としが出やすい確認作業を、AIが全記事にわたってもれなくやってくれます。夜に指示を出して、朝に確認して公開する、という時間の使い方もできます。

そして、ここからが大きいと感じている部分です。

AIネイティブな運用では、修正を重ねながら、その履歴をすべて蓄積できる設計で運営します。さらに、そこで出た判断を、デザインのルール(design.md)や運用のルール(CLAUDE.md)に書き足していきます。

次からAIは、そのルールを読んでから作業します。だから同じ指摘は出なくなり、意図する出力になるよう育っていく。

ここでいう「育つ」とは、AIのモデルが賢くなることではありません。「ルールブックが厚くなっていく」ということです。

薄いルールブックが版を重ねるごとに厚くなっていき、朱色のしおりが増えていくイラスト
モデルが賢くなるのではなく、ルールブックが厚くなる。蓄積されたルールは会社の資産として残る。

厚くなったルールブックは、御社の資産として残ります。担当者や、外部の発注先が変わっても、AIのモデルが新しくなっても、資産は引き継がれていく。

フォントや色も同じです。人の手が入り続けるサイトは、担当者ごとの癖で書体や色が少しずつ増えていきがちです。ルールブックに「使ってよい書体はこれ」と定めておけば、AIは何百回更新しても、そこから外れません。世界観の維持を、人の注意力ではなく、仕組みで担保できるのです。

この、修正履歴とルールを育てて資産にしていく流れこそ、AIネイティブな働き方そのものだと感じています。

それでも、自社だけで進めるのが難しい理由

ここまで読んで、「AIネイティブの良さはわかった。自社でやってみよう」と思われたかもしれません。その気持ちは、とても大事です。

ただ、実際に自社の要件に合わせて最適な形に落とし込むとなると、いくつかの判断が必要になります。どの置き場所(ヘッドレスCMS)を選ぶか。どこに置いて運用するか。更新の流れをどう組むか。会員機能や外部サービスとの連携をどう設計するか。ひとつずつは難しくなくても、組み合わせると、経験がものを言う領域になります。

「速くなるはずが、運用が重くなった」「更新したのに公開に反映されない」。こうしたつまずきは、知識の有無ではなく、要件に合わせた設計判断のところで起きます。

  • 速くなるはずが、更新運用が重い
  • CMS更新が、公開に反映されない
  • 会員機能を入れて、一気に複雑化
  • 静的に寄せすぎて、機能が使えない
  • 自己ホストでキャッシュ不整合
  • WordPress感覚のまま進めて破綻
どれも「知識」ではなく「設計判断」で防げる

まとめ|Webから始める、AIネイティブへの切り替え

最後に、この記事の要点を振り返ります。

  1. WordPressやノーコードは優れた仕組みですが、AIがなかった時代に設計されています。AIを前提にした運用に切り替えるには、土台そのものを変える必要があります。
  2. AIネイティブなWebとは、AIを中心に運営するWebサイトのことです。中身と見た目を切り離し、AIが扱える形に整理しておくことで、言葉で指示するだけで更新でき、属人化からも解放されます。
  3. 土台は「中身を置く場所・見た目をつくる部分・動かす基盤」の3つでできていて、それぞれをAIと相性のいいもので組み上げます。AIに丸投げするのではなく、人が設計と仕上げを担い、AIが実装を担う。この役割分担が品質を決めます。

そして、もう一段大きな話をすると、これからの経営は、いや応なくAIネイティブへと切り替わっていきます。社内の業務も、判断の進め方も、少しずつAIを前提にしたものへ移っていく。その大きな流れの中で、最初の一歩として取り組みやすいのが、Webサイトです。

なぜWebサイトなのか。会社の情報がまとまっていて、成果も測りやすく、切り替えの効果が目に見えやすいからです。ここでAIネイティブな運営を体験しておくと、その感覚が、やがて会社全体のAIネイティブ化にそのまま生きてきます。Webは、AIネイティブな経営への入り口として、ちょうどいい場所なのです。

これから新しくつくる方も、いまの仕組みから切り替えたい方も。まずはWebから、新しい時代の運営を始めてみてください。

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